東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門選出『海抜』 高橋賢成監督インタビュー

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城西国際大学メディア学部2018年卒 高橋賢成さんインタビュー

インタビュアー:山羽真梨那

山羽:この度は監督された『海抜』が、東京国際映画祭日本スプラッシュ部門に選出おめでとうございます。まずは、選出された時の率直な気持ちはどうでしたか?

 

高橋:撮影をしていたのは去年の秋でしたが、まず卒業制作の正規の枠から漏れて、完全に自主制作で作っていたので、それがここまで来たかという思いです。様々なこの1年間の気持ちが、全部どどって押し寄せてきて、何にも言葉が出なかったです。

山羽:卒制の枠ではないとはどういうことですか?

 

高橋:卒制の単位はもらえるんですけど、卒業制作という学校から予算が降りる枠があって、この学校の卒制を取る唯一のメリットが無くなったっていうところからスタートしました。スタッフもすごい少ない人数しかいなくて、最初の企画の立ち上げの時4人しかいませんでした。

 

山羽:ほぼ自主制作で進められたということですが、完成する頃にはスタッフに同級生や後輩も入っていたのですか?

 

高橋:そうです。卒制の実際の撮影に入る時には、僕が4年生の時の3年生が来てくれました。彼らがいてくれなかったら、もう絶対無理だったという感じです。

 

山羽:仲間と共に作り上げた作品だったのですね。

 

高橋:そうですね。4年生は6人くらいしかいなかったんです。僕、人望が無いから4年生が集まらなくて。

 

山羽:後輩はイエローカップル(高橋さん設立の映像制作サークル)の後輩ですか?

高橋:そうです。イエローカップルで一緒にやってきた子がメインだけれど、ほとんど今回初めて一緒に取り組んだみたいな人でした。

 

山羽:入学してからずっと映画一筋できたと思いますが、そもそも城西国際大学メディア学部に入ったきっかけはなんですか?

 

高橋:最初は、日活芸術学院に入ろうと思っていました。でも、日活芸術学院が潰れて、城西国際大学が買収をしたということを聞いて入ろうと思いました。僕、勉強が全然できないんですよ。地元の田舎の工業高校出て、大学入ったのでそもそも偏差値がそんなに無くて。映画を作る学校って日芸とか、芸大と言ったら、武蔵美、多摩美とかにはとても入れなかったんです。だから来たというと嫌だけど、でもそれ以上に映画を作る学校って大学じゃなくても沢山ありますよね。その中でも、この学校に来た一番の理由は日活芸術学院が前身にあったからです。

山羽:高校生の時からずっと映画が好きで、作りたいと持っていたのですか?

 

高橋:映画をちゃん作りたいと思うようになったのは、高校を卒業する頃ですかね。

 

山羽:実際に入学されて、映画作りを学んでいく中で、秘密結社イエローカップル(サークル)を立ち上げましたがその中で一番印象に残っていることは?

 

高橋:やっぱり、今回の『海抜』が東京国際映画祭に行ったことです。純粋にサークルの作品ではないけど、僕本当に人望が無い方なんですよ。その僕が3年生になった時、当時1年生の子達が、イエローカップルに40人くらい入って、紀尾井町のサークルの中で一番人数が多くなったの。でも、その次の年に34人やめちゃったから、人望無い方なんだよ。だからその残った6人たちと一緒にずっと作ってきたということがあるから、今回の卒制も手伝ってもらったし、そういう意味では、やっぱりサークルの印象に残っていることって言ったら、間違いなく今回の『海抜』じゃないかなって思いますね。

 

山羽:次にメディア学部のカリキュラムや授業で役に立ったものはありますか?

 

高橋:ない(笑)でも、この学校に入ってなかったらこの映画も作っていなかったし。東京国際映画祭に行くってこともなかっただろうから、役に立ってないとは言えないけど、授業の中でこれはっていうのは無いかな。

 

山羽:ご自身の努力の成果ですね。

 

高橋:逆にある?これ役に立ってるなっていう授業があったらむしろ教えて欲しい。

 

山羽:学外で行われるプロジェクトの授業(笑)

 

高橋:それってさ、大学のオンラインの授業では無いじゃん。課外プロジェクトでしょう?だからそういうことなんだよ。だけど、この学校に来て良かったとは思ってるよ。ただこの学校の授業は役に立ってないかな(笑)

 

山羽:どういうところは来て良かったと思いましたか?きっかけ作りとか仲間ですか?

 

高橋:それはちゃんと4年間学費を払って、対価をもらっているだけだから。

 

山羽:高橋さんに憧れていたり、高橋さんのような映画を撮りたいと思っている後輩はどうしたら良いですか?

 

高橋:今回選ばれてことですごい舞い上がっているけれど、これは奇跡だと思うんですよ。クオリティで言ったら本当に商業の劇映画と遜色無いレベルだとは思ってるけど、実際に見比べたら、やっぱり爪が甘いところっていっぱいあると思うし。でもそういう爪が甘いところも含めてきっと、学生映画ってここまでできるんだね、っていうのを認めてもらったっていうのがあるから、これが学生じゃなかったら選ばれてなかったと思う。それで、別に俺に憧れてる後輩なんていないと思うし、憧れない方がいいよ。そして、一つだけ言えるのは誰かに憧れたら、その段階でその人にはなれないから。その人を越すことはできない。だから、僕が1年生の時なんかは、すごいな、憧れるなという先輩がいっぱいいたけど、僕の唯一大学4年間で誇れることは、誰かの下にいなかったこと。

 

山羽:誰かの下にいて、そこで止まるのではなく、違うところで自分を発揮していったということですか?

 

高橋:そう、なんかカッコつけてるみたいでアレなんだけど、誰かに憧れた段階でその人を越すことはできないと思う。

山羽:今現在は、どんなことをされているんですか?

 

高橋:普通のバイトをしながら作品作りをしてますね。

 

山羽:今このチャンスをきっかけに今後どうしていきたいですか?

 

高橋:そうだね。やっぱり映画祭はいろんな人が来ると思うので、高橋賢成っていう存在をまず覚えてもらいたいなって。本当に無名なわけだし、レッドカーペットを歩いたとしても誰ってなるだけだと思うから。やっぱり、普通の人じゃできないことをやらなきゃいけないと思う。ここで人脈作りっていう言葉は、本当に嫌いなんだけど、なんかチャンスって意味で言えば、やっぱりいろんな人と出会って、こいつちょっと面白いないって思ってもらえるようにしなきゃいけないかなって思います。ただ本当に生活が出来ないので、ずっと映画やるとは言えないです。

 

山羽:城西国際大学で学んでいる後輩に向けてメッセージはありますか?

 

高橋:まぁ某大学の芸術学部に入ってなくて良かったねって(笑)あと学生に対してじゃないけど、今回のこの僕が選出されたということで、城西国際大学という大学の知名度がちょっと上がったのかな?って思うんですねよ。喜ばしいことなんですけど、何か別に大学からお金出してもらったわけではない(笑)

 

山羽:名前を利用され、著作権は取られたと(笑)

 

高橋:そうそうそう。でも、それでもよかったらと思いますよ。いっぱい迷惑かけてきた分、今やっと0に戻って借金を返した感じです。そして、後輩に言いたいのは、東京には沢山劇場があるのに、映画を見てない人達が多いと思う。なんか雰囲気だけで良い機材買ってさ、レールとか使って、ドリー引いたりとかやってるけども、それは違うよ本当に。機材とか技術力とかじゃない。学生映画ってコアでぶつかっていくものですよ。だからその気をてらったことしなくていいんですよ。ちょっと違う、プロがやりそうなことをやる必要はないんですよ。プロのように撮らなくていいですよ。

 

山羽:プロと学生は違うものですか?

 

高橋:違いますね。学生はプロの真似をするんじゃなくて、少しでも目立ったほうがいいでわけだから本当に。だから、雰囲気的なところで、なんか映画やってます、カラコレやってます、とかそういうことじゃないと思う。JIU映画祭を毎年見ていても、毎年作品の傾向があったりするけど。僕の個人的な見解で、学生らの基準はどんどん上がっているけど、学生ら全員のレベルが上がったわけじゃなくて、レベルが上がっていない人というのも増えてます。一部の上がる人がグングングンと上がっているだけで、むしろ3、4年前よりも全体的な水準は落ちていると思う。だから今むしろチャンスですよ!抜き出るのは本当に簡単だと思う。

 

山羽:抜きでる人とでないの違いはなんだと思いますか?

 

高橋:やっぱりね内容!映画は脚本。映画は脚本が良ければ95%面白い。技術を揃えるよりも、一眼を揃えるよりも、まずちゃんと本を練ろうよ。そのために、作品を沢山見て吸収して、自分ができる経験を色々して。例えばですけど、女の子だったらボロボロになるような恋愛をしてみたりとか、男だったら一ヶ月の給料をパチンコで刷っちゃうとかね。そういう経験をいっぱいして人間ってこういう感情あるよねって、ところに気づいたほうがいいし引き出しを増えるし内容に深みがでる。だからこれは本当に言いたい!本当に頭出すチャンス!

 

山羽:全員チャンスがあるんですね。インタビューは以上になります、ありがとうございました。

 

高橋:ありがとうございました。

 

レッドカーペットでの様子

インタビューを終えて(左:インタビュアー山羽真梨那 右:高橋賢成監督)

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