林家ぽん平さんはメディア学部卒業後、2019年4月に入門し前座修業に入りました。今回、落語家としてステップアップを果たして二ツ目に昇進され、今後の活躍が期待されるぽん平さんに、JIU Media Plusが独占取材を敢行しました。昇進までの道のりや、お父様でもある正蔵師匠との関係、噺家としての今後の展望を伺いました。
インタビュー:武井さくら
前座から二ツ目へ
二ツ目になるまで、入門してから約6年ですのですごく長かったですね。前座は、浅草演芸ホール、池袋演芸場、末廣亭、鈴本演芸場の4か所の寄席で365日修行しなければならないので、休みは1日もありません。寄席で昼席に間に合うよう10時に来て夕方の5時まで働きますが、お給料は1日1,000円です。本当に修行ということで汗水たらして一生懸命楽屋働きに出ておりました。自分は本当にかなり不器用でしたので、もう右も左もわからない世界にいきなり入って、先輩方にとても迷惑をかけたこともありましたけど、本当にいろんな方の支えがあって、何とかここまで来れたな、という印象です。 二ツ目になってうれしかったことは、羽織を羽織れるようになりましたし、高座も構成など自分で考えて出来るようになりました。なにより高座に上がると、お客さまが「おめでとう!」と言って下さってとても喜んでくださいますし、それが励みになって、これからももっと芸を磨いて精進していきたいなと思っています。
思い出の場所からスタート
二ツ目に昇進披露の場となった浅草演芸ホールは、毎年8月31日に林家一門会が行われるなど、林家の本拠地のような場所でもあり、小さい頃から想い出があるので、自分の中ではホームグラウンドな感じです。二ツ目となって初めての高座がホームグラウンドからのスタートでしたので、初心に戻って気持ちもギュッと引き締まりましたし、お後には正蔵師匠含め、小さい頃から見てきた沢山の先輩方も出てますので、一歩でも近づけるよう、これからも日々先輩方の言葉を頂戴して精進して修行していきたいです。

親子である九代目林家正蔵師匠との関係
実の親でもある師匠との関係ですか?高座に立つと、親子ではなく師匠と弟子です。落語の世界は世襲制度ではないので、師匠に入門したらたとえ戸籍上は親子であっても、日常生活の中でも父ではなく師匠として接するのが、林家一門では基本です。母もおかみさんになりました。芸の世界における厳格な師弟関係が保たれています。ちょっと大変だなとか、辛いなって思ったこともございますけど、好きで入門したものでありますし、師匠の教えを胸に、日々高座に上がっています。 師匠からの言葉はすべて大事なのですが、特に「常に一番下でありなさい」とか「何事にも感謝の気持ちを持って取り組んでいきなさい」という、挨拶や礼節の精神についての言葉が、入門した当初から胸に大事に刻まれております。
稽古から披露まで
得意な演目ですか。一番最初に師匠から教わったお噺『味噌豆』がすごく好きです。最初にお客さんの前で話せるようになった演目ですし、実際におかみさんに味噌豆を作っていただいたことも印象深いです。 稽古は、先輩方や師匠の前にテーブルを置いて、お茶を持ってきたり座布団をひいたりしてから、「よろしくお願いいたします」と一礼してから、稽古を付けてもらいます。自分は座布団は当てないで、床に直に正座します。「録音をとってもよろしいでしょうか」と聞くこともありますが、録音してはいけない稽古の仕方もありまして、師匠が喋ったのを、じゃあすぐにやりなさいと言われて、しどろもどろになりますけど、そういったやり方もございます。 一つの演目を何度も師匠の前で披露させてもらい、言葉の使い方が間違っていたり、所作が違っていたりすると、手直しを繰り返して、それからやっと「上がっていいよ」、「上げね」などと言って、「上げ」というのは、お客さまの前でかけていいよっていう意味なんですけど、そう言われたら、やっと高座にかけることが出来るようになりますね。
真打やその先を目指して
まだまだこれからなのですが、やはり噺家になった以上は高座の座布団に座った時に、お客さまから「わーっ!」とか歓声をいただける芸人になりたいですし、1人でも多くの方が帰り道で「今日良かったな」って笑顔で喜んでスキップして帰られる方を1人でも多く増やせる噺家になりたいと思っています。そして、寄席にいかに入りやすくするかというのは、芸人の力だと思っていますので、頑張って若い人に響く取り込みをしていきたいと考えております。
大学の後輩へメッセージ💫
大学の時ですか?自分は、ひたすら飲んでばかりいる学生でしたね(笑)。それでも、決まった友人とばかり付き合うよりも、学生時代は様々な経験をして、いろんな方と話した方が良いなって思います。学生時代は学業だけでなく、バイトも含めて様々なことを体験しやすいですし、そうした経験は今後に絶対に活きるので、これはちょっとやりたくないなって思うようなことでも、興味を示してみたりとかしていくと、10年後20年後にやって良かったなと思えます。僕も卒業後、まだそんなに経ってないですけど(笑)。
高座中のぽん平さん
当日の高座では、ぽん平さんは『子ほめ』をかけられました。
私は寄席で落語を聞くのは初めての経験でしたが、ぽん平さんの高座は、語りの力だけで情景が次第に頭の中に浮かび上がり、所作や声の使い分けで、登場人物それぞれの性格や立場がはっきりと伝わり、まるでお噺の世界の中に入り込んだような感覚になりました。 時代を超えても共通する、人間関係の不器用さや気遣いの可笑しさを感じ、笑って、考えさせられ、心があたたまる。そんな魅力を感じる落語でした。
寄席にまだ行ったことのない皆さんも、ぜひ足を運んでみてください!
林家ぽん平 落語家。1996年7月31日生まれ。メディア学部卒業後九代目林家正蔵師匠に入門。前座修行を終え、2025年5月21日付で二ツ目昇進となる。同日から浅草演芸ホール5月下席昼の部にて昇進披露として出演。今後も6月上席に池袋演芸場、中席に鈴本演芸場、下席に末廣亭と高座を控える。