こんにちは!メディア学部ネットコンテンツチームの武井です。
突然ですが、私たちは日常で多くのメディアに触れています。そこで、私達が触れてきたメディアを発信・連載することにしました。
今回は、私が最近触れたメディア「映画『国宝』」についてお話しします。
映画「国宝」
あらすじ
任侠の一門に育った少年・立花喜久雄(吉沢亮)は、抗争で父を失った後、上方歌舞伎の名門家・花井家に引き取られます。一方で、花井家の実子である御曹司・大垣俊介(横浜流星)は、生まれながらに後継者として教育を受けてきました。
生い立ちも才能のきっかけも異なる二人は、ライバルでありながらも互いを高め合う存在として成長し、芸に青春を捧げていきます。やがて、俊介でなく喜久雄が舞台の代役に選ばれたことを境に、友情と確執、信頼と裏切りが交錯。
もがき苦しみ、“人間国宝”とまで呼び讃えられる歌舞伎役者へと昇りつめていく壮絶な人生の物語である。
この映画は、吉田修一さんの原作で、『悪人』『怒り』などによる長編小説では「現代の芸術と人生を描いた傑作文学」として高く評価され、過去に芥川賞にも受賞されました。そして吉田修一自身が3年間歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験を血肉にし、書き上げた渾身作です。監督の李相日さんは、重厚な人間ドラマを得意とし、原作の核心を深く掘り下げます。そして主役は、その美貌をもちながら、どんな役でも演じ切る圧倒的演技力で、脚光を浴び続ける吉沢亮さんと第48回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞が記憶に新しく、その他数々の受賞歴を持つ横浜流星さんです。
「日本の伝統芸能を舞台にした、現代的かつ普遍的な人間ドラマ」で映像美と演技力、文学的テーマを兼ね備えた作品で多くの人に期待されています。✨
実際に映画を鑑賞してみて
『国宝』は、日本だからこそ表現できる芸の世界の厳しさと美しさを、圧倒的な映像と演技で描ききった作品でした。歌舞伎という伝統芸能の世界を題材にしながらも、決して敷居が高い作品ではなく、「知らなくても魅せられる力」力を持った映画だと感じました。
特に印象的だったのは、主人公・立花喜久雄の視点(一人称カメラワーク)で撮られた場面です。今まさに本人が見ているであろう風景がスクリーンに映され、観客自身が“喜久雄としてその瞬間に立っているような感覚になる。この演出が、彼の感情の揺れや芸に対する執念を、より直接的に伝えていました。
また、化粧、衣装、楽屋での立ち居振る舞い、挨拶の所作。普段見ることのできない歌舞伎役者の日常や裏側が、丁寧に描かれていたのも、本作の魅力の一つです。ステージに立つまでの張りつめた空気や、積み重ねられたルーティンの重みがリアルに伝わってきました。
そして、この映画は「才能」と「血筋」という言葉にフォーカスしていると感じました。喜久雄は血の繋がりがない立場から歌舞伎界に入り、一方で俊介は世襲の名門として育つ。お互いにないものを持ち、そこに対する嫉妬、葛藤、そして尊敬が複雑に絡み合う。そのお互いにないからこそ“選ばれ方の違い”が、決して一方的な優劣ではなく、両者にそれぞれの苦しみがあるという描かれ方をしていたことが、非常に印象的で、苦しみが伝わり、私自身も苦しくなりました。
吉沢亮さんの演技にはとにかく引き込まれました。セリフよりも「表情」で語る瞬間の多さが際立ち、その使い分けの器用さに目を奪われました。特にラストの、お初役:俊介(横浜流星)と徳兵衛役:喜久雄(吉沢亮)との歌舞伎の演目「曽根咲心中」での演技の違い。感情か、伝統か。魂か、型か。2人の役者が1つの演目「曽根咲心中」に命をかけて挑む姿は、舞台上でしか交われない「人生のすれ違い」そのものだと感じました。
白塗りの化粧が汗で落ちていくラストの場面。「実際に舞台上で化粧が落ちてしまうことは演出として成立しているのか?」という疑問さえも、物語の熱量が上回っていました。むしろ「それでも演じ続ける」という姿に、芸の覚悟と破滅的なまでの情熱が2人に詰まっていたと感じました。
「曽根咲心中」だけでなく、他の演目「二人道成寺」も披露していて、歌舞伎は、私が知っている白や赤の毛を振り回す毛振り、演目名「連獅子」だけではなく、女方の芸の披露や、演目が多くあることを知りました。
決して短くない上映時間ですが、「長かった」という感覚より、「美しい3時間だった」という感想が勝ります。むしろ、もっと見ていたい。
歌舞伎を知らない人でも、舞台の迫力、役者の情熱、人間関係の濃さ、すべてを肌で感じることができる。それほどまでに“引き込む力”を持った映画でした。
「芸術とは何か、生きるとは何か」を問いかける骨太なテーマだと感じ、映画を鑑賞後、すぐには立ち上がらずに、言葉でどう表現するかを考えてしまう作品でした。そして、一般には馴染みの薄い歌舞伎の世界を、リアルかつ感動的に描くことで、芸術に興味のない層にも届く可能性を感じました。観終わったあとに、「歌舞伎を観てみたい」と自然に思わせてくれる、そんな貴重な作品でした。✨
この映画は、日本伝統芸能「歌舞伎」の女方の話である。きっと日本アカデミー賞を受賞するのではないかと予想した。
映画「国宝」公式サイト,Instagram,X,ストーリー映像,